原題はSpock's World (そのまんまですね)
読み終えると、「スポックの」というよりは「ヴァルカンの」という方が適当な気もしますが(勿論、売り上げ的には「スポック」でないと駄目って分かりますけど) この前読んだTOS小説「救世主(メシア)の反乱」が娯楽に徹した作品だったのに比べて、本作は180度趣きの異なる、結構お堅い真面目な話。でも、面白くないことは無い・・深い味わいに満ちていて、なおかつ、ところどころ笑えて最後はほんわか・・というか。数回読み返してこそ、真に理解が出来そうな・・。
時間軸でいうと映画一作目の後位とのこと。ヴァルカンで宇宙連邦脱退の機運が高まり、ついに国民投票が行われることになります。その投票に先立って行われる討論の場にカーク、スポック、マッコイは証人として招かれ・・。
カーク達の物語・・いわば「現在」のお話と、星が出来た時から(←!!)綿々と続く「ヴァルカンの歴史」の話が、交互に展開していきます。その、ヴァルカンの歴史の話が結構凄惨というか、後味悪いんですが、「ヴァルカン人」(のメンタル)がいかに形成されていったかを辿る・・検証していくものなので、避けては通れない・・。
「ヴァルカンの」とは言ってますが、本作の訴えかけてくるテーマは今の現実の地球の世界の、誰にでもあてはまるであろう普遍的なもの・・上手いこと言えませんし、時間が経ったら言うことも変わるかもしれませんが、とりあえず現時点では、「他者(未知)を受け入れることを恐れるな」・・というか。こうして単体で書いても陳腐というか、「伝わらない」とは思いますが・・。
我ら日本人には馴染み薄く苦手であろう(そもそも、普通に生活してたらやんないですし)、ディベートが本作の重要な「舞台」。馴染みが薄いからこそ余計、「一体全体、どんなことゆぅてヴァルカン説得するつもりなんやろ?」と興味がもてるというか。諸外国の多くでは普通に義務教育中でやること・・日本でもこのスキルを身につけさせた方がいいんでしょうけど、教える方にその、テクが無いでしょうから難しいでしょうね。でも、「諸外国と互角に渡り合う為」とかいう目的以前に、普通の日常でももう少し、「言葉で」相手を説得させるために、自分の意見・考えを有効に表明できる術を、我々は身につけた方がよさそうな・・。
「和をもって尊しとなす」もいいですけど、言いたいことを言えない・・相手に伝えることが出来なくて、結果、暴力等の極端な手段に走ってしまう・・ってなケースが多過ぎる・・勿論、ディベートの技術を教えれば、すぐにでもそれら全てが単純に解決されるだなんて思ってませんけど、それにしても、「手段あったやろ?」「まず出るとこ出て、言うべきこと言えよ」と突っ込まざるを得ない案件が多々・・。自分ひとりで面倒を見なければ・・と思い込み、相談員や周囲の人に悩みを話さず、痴呆の親を絞め殺す息子、父親に暴力をふるわれて、そのことを学校にも警察にも話さず、結果家に放火して母親と弟妹を焼き殺す息子・・。他者に話していても結果は変わらなかったかもしれませんが、話してさえいえば変わっていたかもしれない「可能性」はある訳で・・。そんな「可能性」・・言葉の力も、伝えることの大切さも、頭の隅にすら浮かばなかったのか・・(日本の)教育の無力さを痛感・・。学校ではなく、家庭で教えることだ・・とも言われるかもしれませんが、その家庭(親)が正しく機能しているとは限らない、そんな中で子供を(いろんな意味で)救う為には、やはり公共機関である学校で、言葉のスキル・・そしてその根幹を成す、「自分の頭で考えて、自分で判断を下し、自分の言葉で話す」という能力の育成を、はかって頂きたいというか。
話がだいぶズレましたが・・。小説の感想に戻りますと、メイン3人ではマッコイが一番「おいしい」ような・・。彼のカークに対しての言葉遣いが、私が一番親しんでいるテレビ版吹き替え「ほとんどタメ口で、たまに敬語」とは真逆の、「ほとんど敬語でたまにタメ口」だったのにはちょっと違和感ありましたけど、とにかく彼の人柄が随所に表れていて微笑ましいです(逆にカークとスポックは影が薄いような・・) 3人の中で最初に証言するってのもいい・・読者側が、「3人はどんなことゆうのか?」と興味深い状態でのファーストインプレッションなので。
サレックとアマンダもいい感じ。「スポック」とはついてますけど、どっちかといえばこれはサレックの物語。
脇役ではやはり、ハマルキ人:ク・ス・トゥ・ルクが「おいしい」・・茶目っ気たっぷりで、ちょっと(いや、かなり)エキセントリックな「彼女」がどんなルックスかは、是非挿絵で確認して頂きたいというか。彼女が最初に登場した時に、身長1メートルくらいという説明があるんですが、これが後の登場時、重要なネタフリ(?)であったことに気付く・・この話で一番笑えるシーン。
それにしてもこの事件にも「首謀者」がいた訳ですが、動機が、「それって単なる逆恨みやん」という感じで、なんだかな~と。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |